「坊っちゃん」 夏目漱石

とても面白かった。坊っちゃんの真っ直ぐで単純な性格がすごく良いなぁと思う。どんなことにも直球で真正面から堂々と向き合う坊っちゃんは、実際にいそうなほどイキイキとしているけれど、でもたぶんいないと思う。まさに痛快、という感じだけど、ちょっと冷静に考えてみたら坊っちゃんってあんまり性格良くないなぁ(笑)。田舎に来ちゃって不貞腐れているのか全体的に否定的なものの見方をしている感じ。坊っちゃんが執着しないカラッとした性格だからかあまり目立たないけれど。

「こころ」の、淡々とした淡白な文体とは全く異なり、こちらはかなり躍動感のある作品。そしてすべてにおいて“坊っちゃん”の主観がかなり強くて、坊っちゃん独特のものの見方が笑える。明治の人はこの作品でビックリしたんじゃないかな。こんなに笑えるという意味でも面白い作品だとは思わなかった。

“単純明快”という言葉がぴったりだと思った。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「こころ」 夏目漱石

こころ

親友を裏切って恋人を得たが、親友が自殺したために罪悪感に苦しみ、自らも死を選ぶ孤独な明治の知識人の内面を描いた作品。鎌倉の海岸で出会った“先生”という主人公の不思議な魅力にとりつかれた学生の眼から間接的に主人公が描かれる前半と、後半の主人公の告白体との対照が効果的で、“我執”の主題を抑制された透明な文体で展開した後期三部作の終局をなす秀作。

              ・

今年の夏は所謂名作を読もう。これが夏休みの自分の中の課題。で、「こころ」が栄えある1冊目の作品。普段“名作”なんてものになかなか手が出ないもので、考えてみると“名作”と呼ばれるものを初めて読んだのかもしれない。

                  ・ 

泣いた。あんなに泣くとは思わなかった。もう、先生の過去がどうこうじゃなくって、「私」の気持ちも関係なくて、言葉では上手く表現できないけれど、とにかく理屈じゃなくって涙が溢れた。自分でも何故こんなに涙が止まらないのか理解できなかった。

「私」が先生からの長い手紙を受け取り、だけど時間が無くてバサバサとめくっているうちに目に飛び込んできた“この手紙が貴方の手に落ちる頃、私は~”という言葉。ここを読んだとき、「私」が私だったことに愕然とした。「私」がこの言葉を偶然目にしたのを思い描いたのではなく、私がその言葉を不意に目にしてしまった。「私」がその言葉を目にして感じたであろう驚愕や衝撃を想像したのではなく、私が驚愕し、衝撃を受けた。心臓をぎゅっと掴まれたかのように、一瞬息ができなかった。頭の中が真っ白になった。「私」のことを思って涙が出たのではない。

「こころ」の内容は、当時は珍しかったとしても今ではもうすでに語られた感があるし、そのうえあらすじで知っていたし、“この手紙が~”の件も言ってみればベタで次に続く言葉なんて容易に想像できる。だから心穏やかに読めるはず。なのに・・・っ。「こころ」で一番驚かされたのは、何時の間にか「私」=私になっていたこと。淡々としていてどちらかと言えば体温の低い文体で描かれていて、自分としては冷静に、客観的に読んでいるつもりだった。けれど自分でも知らず知らずのうちに引き込まれ、「私」と一体化し、なのに“この手紙が~”のところで私が驚愕し衝撃を受けて初めてそれに気付かされたことに、私は愕然とした。そこが何よりもすごいと思う。こんな作品初めてだ。私にとって未知の感覚だった。

この感覚に、私は痺れた。興奮したと言ってもいいのかもしれない。この感覚を、衝撃を、涙が止まらなかったときの気持ちを言葉にしたいけれど、上手く表現できない。あぁもぅ、自分の語彙力の無さが歯痒い。でも、これだけは理解る。

これは、私の頭にではなく私の「こころ」に響いてきた作品だ。

| | コメント (1) | トラックバック (2)