「夏の庭」 湯本香樹実

夏の庭―The Friends

小学6年の夏、ぼくと山下、河辺の3人は、人が死ぬ瞬間を見てみたいという好奇心から、町外れに住むおじいさんを見張ることにする。一方、観察されていると気づいたおじいさんは、憤慨しつつもやがて少年たちの来訪を楽しみに待つようになる。ぎこちなく触れあいながら、少年達の悩みとおじいさんの寂しさは解けあい、忘れられないひと夏の友情が生まれる。  

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この作品は夏の終わりという印象が強い。8/31みたいな。8/31と9/1は1日しか違わないけれどその違いって圧倒的に大きい。この作品も、なんとなく、そんな雰囲気。

忘れていく、ってなんとなく寂しいことだと思う。忘れていくから救われるということも多いと思うけど、一度考え出すと、私は今まで多くのとても大切なものを忘れてきたんじゃないか?と思えてならない。幼稚園の頃の、好きだった子と一緒にいるととても楽しかったこととか、はじめて自転車に乗れたときの気持ちとか、中学最後の合唱コン前日の苦しいようなドキドキとか、卒業式の日の、ずっとこのクラスのままでいられたら良いのに・・・と思ったときの寂しさやこれからへの不安とか・・・。そのときの感情がリアルによみがえってこない。すべてリアルなままだといっぱいいっぱいになっちゃいそうだけど、でも忘れないでいたかった。

だから、山下の心配は痛いほどわかったし、木山の「忘れたくないことを書きとめて、ほかの人にもわけてあげられたらいい」という言葉には顔をくしゃくしゃにして泣いてしまった。でもそんな彼らがいるから希望があって未来があって、悲しく切ないけれどまぶしくて、なんだかまるで夏の終わりのような感じだった。おじいさんとの出会いと別れを通じて少し大人になった3人を、目を細めて見つめているおじいさんの姿が目に浮かぶよう。3人のように、『もしおじいさんだったら』というふうに考えられたら素敵だなぁと思った。

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